どの企業の事例か
ボーダフォンは、ヨーロッパ最大級のモバイルおよび固定ネットワーク事業者です。 世界中の数億人の顧客と多くの従業員を抱え、人事部門やカスタマーサポート部門には日々膨大な量の問い合わせが寄せられていました。
解決したかった課題
従業員や顧客は、休暇申請、料金プランの確認、各種手続きといった単純な質問に対する回答を得るために、サポート担当者につながるまで待つ必要がありました。 一方、サポート担当者は、反復的な問い合わせ対応に多くの時間を費やしており、より複雑で付加価値の高い業務に集中できないという課題を抱えていました。 同社は、デジタル技術を用いてこれらの体験を改善し、迅速かつ効率的な情報提供を目指していました。
AIをどう使ったか
ボーダフォンは、AIを活用したバーチャルアシスタント「TOBi」を導入しました。 TOBiは当初、テキストベースのチャットボットとしてスタートし、IBMのAIプラットフォーム「IBM Watson Assistant」などを活用して構築されています。 自然言語処理(NLP)技術により、人間が話すような言葉での質問の意図やトーンを理解し、対話形式で回答します。 TOBiは、単純なFAQに答えるだけでなく、必要に応じて顧客のアカウント情報を変更するなど、具体的な処理も実行可能です。 問題が解決しない場合は、人間の担当者にスムーズに引き継ぐ機能も備わっています。 2024年にはMicrosoftとの10年間の戦略的提携を締結し、Azure OpenAIの生成AIを基盤とする次世代版「SuperTOBi」への刷新を進めています。SuperTOBiは従来のキーワード中心の理解と異なり文章全体の意図を解釈して回答でき、既にポルトガルやイタリアなど複数の国で顧客対応を開始しています。
予想アーキテクチャ
以下は公開情報と一般的な構成から推定した予想アーキテクチャです。基盤技術の変遷(IBM Watson AssistantからAzure OpenAI基盤のSuperTOBiへ)は公開発表で確認できますが、社内システムとの連携方式など内部構成の詳細は推定を含み、断定するものではありません。
- ▸入力データ: 顧客や従業員がWebサイト、公式アプリ、WhatsAppなどのチャット画面から入力する自然言語の質問テキスト。
- ▸AI処理・モデルまたは検索層: 従来のTOBiは、IBM watsonx Assistantなどの対話型AIプラットフォームが自然言語理解(NLU)でユーザーの意図を解釈し、事前に学習させた社内規定や製品情報などのナレッジベースを検索して回答を生成。IBMの公開事例では、watsonx.aiで顧客対話をシミュレートして会話フローのテストを自動化していること(テスト時間を6.5時間から1分未満に短縮)が確認できます。2024年以降の次世代版「SuperTOBi」ではAzure OpenAIの生成AIが基盤となり、従来のIBM系技術やMicrosoft LUISは段階的に置き換えられていくと報じられています。
- ▸業務システムへの出力: 生成された回答テキストをチャットインターフェースに表示。住所変更やプラン変更などの手続きが必要な場合は、バックエンドの顧客管理システム(CRM)や人事情報システム(HRIS)とAPI連携して処理を実行、または該当ページへ誘導。
- ▸監視・ガバナンス: 管理ダッシュボードで対話数、解決率、顧客満足度(NPS)などをモニタリング。 未解決の質問や対話ログを分析し、継続的にAIの知識を更新・改善するクローズドループのフィードバック体制を構築。
導入効果と見るべきポイント
- ▸問い合わせ対応の効率化: TOBiは13カ国・15言語で月間約4,500万件の問い合わせに対応しています。IBMの公開事例では、会話フロー改善により初回接触での解決率が16%から44%へ向上。人間の担当者はより複雑な問題に集中できるようになりました。
- ▸顧客・従業員体験の向上: ユーザーは24時間365日、待つことなくすぐに回答を得られるようになりました。生成AI版SuperTOBiを先行導入したポルトガルでは、初回解決率が15%から60%へ向上し、オンラインNPSは14ポイント上昇して64に達したと公表されています。
- ▸コスト削減と生産性向上: 定型業務の自動化により、サポート部門の人件費を含む運用コストの削減に貢献しています。
- ▸見るべきポイント: この取り組みは、単なるコスト削減のための自動化ではありません。AIを「チームの重要な一員」 と位置づけ、人間とAIが協業することで、顧客と従業員双方の体験(CX/EX)を向上させている点が重要です。
日本企業が参考にできること
ボーダフォンの事例は、大企業だけでなく、多くの中小企業にとっても示唆に富んでいます。人事、総務、ITヘルプデスクなど、社内に定型的な問い合わせが多い部門は、AIチャットボット導入の有力な候補です。最初は特定の領域のFAQ対応からスモールスタートし、対話データを蓄積しながら徐々に対応範囲を広げていくアプローチが現実的です。これにより、業務効率化と従業員満足度の向上を両立させることが可能になります。
今日のAIニュース
参考リンク
- Vodafone社 - TOBi - IBM↗
- Our TOBi AI is transforming user experience | Vodafone UK↗
- Vodafone – Putting Data to Work - Digital Innovation and Transformation↗
- Vodafone Germany Equips Chatbot With Real Voice and Avatar - The Fast Mode↗
- Meet SuperTOBi - Vodafone's new Generative AI virtual assistant (Vodafone)↗
- Vodafone supercharging customer experience with Microsoft's GenAI tools (Vodafone)↗
